Empowerment Engineering

内発的動機づけをソフトウェア開発の力で支援する

バシッとチャレンジ。ちょうどよい課題の価値とちょうどよい課題をつくりだすスキルについて考える

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何かを成し遂げるには訓練・努力が必要です。
単に訓練をするだけでは不足です。
ちょうどよい課題 =チャレンジ(隠語のほうではない)が必要です。
では、ちょうどよい課題はどのように作り出せばよいでしょうか?
まとめます。

様々な文脈で重要となる「ちょうどよい課題」

フロー

チクセントミハイ氏が提唱する フロー理論
時間の経過も忘れ、何かに没頭しきっていて、高いパフォーマンスを発揮する状態です。

フローに入る条件には複数の要素がありますが、その中の一つとして

  • ちょうどよい水準の難易度の取り組みをしていること

という点があります。
自分の能力よりも少しレベルの高い挑戦です。

The Comfort Stretch Panic model

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The Comfort Stretch Panic model はノエル・M・ティシー氏による成長に関する説です。

成長の3つのゾーンを3重の円で考える時、真ん中から順に

  • Comfort zone
  • Learning(Stretch) zone
  • Panic zone

になります。

ここでも今の自分が持つ能力よりも少し上のゾーンに居続けることによって
成長する、という点が主張されています。

Comfort zone

Comfort zone は今の自分がもつスキル・能力でできる範囲のことだけをやっている状態です。

この状態は何か分からないものに挑戦する必要がないため快適=comfortですが、
反面新しいことを覚えていないため成長しません。

Learning(Stretch) zone

Learning(Stretch) zone は Comfort zone から抜け出しつつも自分の限界を超えるほどではない状態です。

Panic zone

Panic zone は自分の限界を超えた状態です。

自分の現状のスキル・能力に比べて対象が難しすぎるため
どうしていいかわからず混乱してしまうような状態です。
悪い意味での緊張= ユーストレス がかかった状態です。

1万時間の法則

フロリダ州立大学のK.アンダース・エリクソン氏によって研究され、
マルコム・グラッドウェルの書籍で紹介されたことで有名になった理論です。
「1万時間の法則」によると才能が開花するには1万時間もの長い時間の努力が必要となるとされています。

1万時間の練習(努力)はただすればいいというわけではなく質が重要です。
自分の限界を少し超える練習=ちょうどよい課題を続けることが大事なのです。
エリクソン教授はそれを deliberate practice と名付けました。
日本語の場合 限界的練習集中的練習 などと呼ばれるようです。

ちょうどよい課題の抽出方法

成長やフローのためには「 意味のあるちょうどよい課題 」が重要であることがわかりました。
1万時間の法則の文脈で言うところの deliberate practice が重要になるわけです。

では、この deliberate practice はどのように見つければよいでしょうか?
大きく分けて4つのものが必要になると私は考えます。

  1. 目的とゴールの設定
  2. 情報の収集
  3. 対象の分割と優先度づけ
  4. 理想と現実の把握

ゴールの設定

学習の目的とゴールを設定します。
ゴールが決まっていないと何を学習すればいいかが不明瞭だからです。

ゴールの設定の例

なわとびで後ろあやとびを飛べるようになりたい

というようなもの

情報の収集

次にゴールに至るまでに必要な情報を収集します。

初学者の状態で課題の洗い出しに取り組む場合は師匠なり、コーチなり、
該当分野に詳しく、感覚派ではない人からアドバイスを受けるとよいでしょう。
※感覚派「ガッとやってバッやればいいよ。簡単だろ?」みたいに言う人。自分が何故達人なのか説明できない。でも凄い、というタイプの人

成長に必要な要素がわかりにくいような分野の場合には、
その分野における上級者とコミュニケーションをとって、その過程に何が必要化ヒアリングして
自分なりに成長の仮説をたてるのがよさそうです。
直接コミュニケーションを取れない場合は、自分が収集できる上級者の範囲の情報から仮説をたてます。

どこにもノウハウが落ちていないような未知の分野の場合はそもそも今回の話の範囲外と考えます。

情報収集の例

インターネットで縄とびのとび方に関する情報を集めてみます。
後ろあやとびについて考えたとき、おそらく

  • 前両足とび
  • 後ろ両足とび
  • あやとび
  • 後ろあやとび

を覚える必要がありそうなので、それぞれに関する情報を調べます。
あくまでたとえなので縄とびに関する詳細については省略します。

対象の分割と優先度づけ

収集した情報をもとに優先順位が分かる形で成長に必要となる学習対象をまとめます。
ある程度カテゴライズできるとよいですね。

対象の分割と優先度づけの例

おそらく以下の順で覚えるのがよいでしょう。
そして各項目内にはその詳細な習得方法の項目があるものとします。

  1. 前両足とび
    • 前両足とびを覚えるために練習1
    • 前両足とびを覚えるために練習2
    • etc
  2. 後ろ両足とび
  3. あやとび
  4. 後ろあやとび

理想と現実の把握

現状の自分が習得済みのものとそうではないものを判別します。
明らかにわかっているものは習得済みと判断し、曖昧なものは学習内容に含めてしまいましょう。

これで優先度順に並んだ練習内容のリストのうち、要練習となる対象のリストが手に入りました。
あとはやるだけです。

理想と現実の把握の例

  1. 習得済み: 前両足とび
  2. 習得済み: 後ろ両足とび
  3. 未習得: あやとび
  4. 未習得: 後ろあやとび

この場合、あやとびを習得するための項目から開始すればいいことがわかります。

まとめ

ちょうどよい課題のみつけかたについて自分なりの考えをまとめてみました。

実は ちょうどよい課題の抽出方法 を実践するためには前提として必要となる要素があります。

前提

  • 動機
  • Googleを使った検索力 or 強い人と多く交流できる力
  • 仮説をたてる能力
  • 他人の暗黙知を形式化する能力
  • 自己効力感

以上のような要素が必要になると考えています。
(取り組む内容によってどの要素がどの程度必要化は変化する)

動機・暗黙知の形式化・自己効力感については個人的に取り組んでいる内容に関連するので
関連情報を下記に挙げておきます。
興味があればご覧ください。

内発的動機づけの支援プロジェクト

Empowerment Engineering

empowerment-engineering.hatenablog.com

暗黙知の形式化プロジェクト

Sharain

tbpgr.hatenablog.com

自己効力

ちょうどよい課題に取り組んでいる状態は
よい意味でのストレスであるユーストレスがかかった状態です。
難易度が上がりすぎた状態は
わるい意味でのストレスであるディストレスがかかった状態です。

これは主観によるものなので、実際のスキルレベルと取組み対象だけでは決まりません。
ここで自己効力感の強さがストレスの度合いに影響します。
自己効力感が高ければよい意味でのストレスの領域が広く、
自己効力感が低ればわるい意味でのストレスの領域が広い、
ということになります。

empowerment-engineering.hatenablog.com

関連資料

1万時間の練習

フロー理論

成長の3つのゾーン