Great CKO ナレジ-序章 古風な経営者とCKOの出会い
終電間際。仕事に追われる一人の姿がある。
株式会社ワナビーイノベーションに勤めるプログラマーの範馬(はんま)くんだ。
範馬くんは特に夢や目的がなく、趣味でホームページを作った経験から
プログラミングに対する興味を持ちプログラマーになった。
ワナビーイノベーションに入ったのも家が近いという以外に特に深い理由がなかった。
ワナビーイノベーションは
「イノベーションを起こすことで世の中に新たな価値を創りだす」
ことを目的にして罠尾(わなび)社長がつくったシステム開発会社だ。
しかし、その志とは裏腹に現場は疲弊していた。
罠尾社長は首を傾げていた。
罠尾「なぜイノベーションが起こらないのだろう?」
罠尾「階層型でがっちりルールを整備した」
罠尾「採用は実力重視で行った」
罠尾「社員は残業しながら頑張ってくれている」
罠尾「年齢に応じて昇給させているし、残業してくれている人は評価している」
話し声がきこえる。
エース人財の属人(ぞくと)さんと範馬くんだ。
田中「属人さん、あれってどうやるんですか?」
属人「もう4回目だぞ。いいか、あれはこの手順でやるんだ」
田中「あざっす」
罠尾「うん、活気もある。」
罠尾「なぜイノベーションが起こらないのだろう?」
罠尾「こらそこ!業務と少しでも関係ない雑談はするな!」
属人・田中「ヒッ!承知しました」
ある日、罠尾社長は知識創造経営に関わる勉強会に参加していた。
そこで知り合った 馴麗寺(なれじ)さんと雑談をした。
罠尾「・・・そんなこんなでなぜかイノベーションが起こらないんですよ」
馴麗寺「そりゃ、起こらないですよ」
馴麗寺は名刺を取り出した。
罠尾は役職名をみた。
罠尾「ツツヌケコンサルティングのCKO?」
馴麗寺「Chief knowledge officer の略ですよ。日本語だと最高知識責任者ですね」
罠尾「どのような役職なのですか?」
馴麗寺「場所によって細かな役割は異なるようですが、概ね共通しているのは知識の創造、保存、共有などに関する計画を練り、実際に導入していく役割ですね」
罠尾「ほほう・・。はじめてききました」
馴麗寺「そうですね。あまり認知されていない役職ですね」
罠尾「そういったことを専門でやっている馴麗寺さんの目から見て弊社の取り組みに改善すべき箇所があるということですね」
馴麗寺「そういうことになりますね」
罠尾「ぜひおきかせ願えませんか?」
馴麗寺「では、一例だけということであれば」
馴麗寺「罠尾さんは『階層型でがっちりルールを整備した』とおっしゃいましたね」
罠尾「はい」
馴麗寺「それはイノベーションとは対極にあるアプローチですよ」
罠尾「え・・・・えぇぇぇぇぇえ!?」
馴麗寺「イノベーションを起こしやすい環境では、各自の自律と大きな裁量、そして多様な人材が集まることによる相乗効果が必要です」
馴麗寺「自由な発想でアイデアを出し、素早く試し、成果を検証する」
馴麗寺「ルールによる制限はアイデアを抑制する」
馴麗寺「階層型による承認フローは試行錯誤のスピードを落とし、裁量の限定は試行の範囲を狭める」
罠尾「そんな馬鹿な・・・」
罠尾「ということは、各自に自由を与え、裁量を与え、階層をなくしフラットな組織にしていくということですか?」
馴麗寺「わかってるじゃないですか」
罠尾「そんなことをしたら社員はサボりませんか?大失態をしませんか?命令がないと動けなくありませんか?」
馴麗寺「まず、きちんと働いているかどうか心配しなければいけないような社員を採用しないことですね」
馴麗寺「また、イノベーションに失敗はつきものです。失敗を経て成功に辿りつくものです」
馴麗寺「命令がないと動けない人については、自律的な働き方を指導する必要があるでしょう」
馴麗寺「自分で問題をとらえ、解決していく力。それもスキルです。」
罠尾「なるほど・・・・」
罠尾「馴麗寺さんのお話は非常に興味深い。ぜひ弊社のコンサルティングをしていただけないでしょうか?」
馴麗寺「いいっすよ」
罠尾「か、軽い!!」
To be continued ...?